石川県金沢市のコステム社会保険労務士事務所の代表を務める。厚生労働省や都道府県等のホワイト企業認定マーク取得、㈱ワーク・ライフバランス認定「働き方見直しコンサルティング」、クラウド勤怠管理システム導入など採用力・定着力向上のための働きやすい職場環境づくりを支援している。講演実績としてアサヒビール(株)、コクヨ(株)、(株)デンソーセールス、農林水産省など。 プロフィールはこちら https://www.costem-sr.jp/about/profile
開業経営者必見!はじめての求人・採用を考えたときに必要なこと。事前準備から手続きまで
人材採用は、会社の成功に不可欠な重要なステップです。
本記事では、初めて求人・従業員採用を考えた時に必要なことを説明します。
特に、求人開始前に決めておくべき雇用のルールについても、詳しく説明します。
初めて採用を考える企業の方は、ぜひ本記事をご覧ください。
Table of Contents
初めての採用で成功するための7つのステップ
STEP1:求める人物像の具体化
以下の手順で求める人物像を明確にすることが重要です。
- 採用の目的を明確にする
・組織の成長や特定のスキル補強など、採用の背景を整理。 - 定量・定性情報の要件を整理
・定量情報:年齢、職歴、保有資格など。
・定性情報:価値観、仕事に対する情熱、キャリアビジョンなど。 - 選考基準の設定
・必須条件(MUST):採用するうえで絶対に必要な条件。
・望ましい条件(WANT):あれば理想的だが必須ではない条件。
・避けたい条件(NEGATIVE):企業文化に合わない行動特性や価値観。
STEP2:労働条件・就業規則の作成
インターネットで求人情報を誰でも簡単に得ることができ、
また人口減少、人手不足から求職者優位の時代において、
労働条件・就業規則を明確にしておくことで、採用後のトラブルを未然に防ぎ、企業と従業員の信頼関係を築くことができます。
- 労働条件の決定
・希望するのが、正社員かパートタイマーかを明確にしましょう。
・所定労働時間や休日、試用期間の有無も事前に決めておくことが大切です。 - 就業規則の作成
・労働基準法では、常時10人以上の従業員を雇用する場合、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る必要がありますが、10人未満の規模でも、入社後のトラブルを避けるため、労働条件を明文化し、全社員に周知することが重要です。
就業規則を作成し、明確な雇用ルールを確定することをお勧めします。 - トラブル防止のための明文化
・初めての採用で解雇の基準なども事前に設定しておくことで、予期せぬ事態に対処しやすくなります。
【事前に決めておくと役立つ主な労働条件】
内容 | ポイント |
雇用区分 | ①正社員、パートタイマー、アルバイト以外に区分はあるか? ②それぞれの雇用区分は、何が違うのか? |
給与の締め日、 支払日 | ①給与は、いつからいつまでの分を、毎月何日に支払うのか? ②支払日が金融機関の休日にあたる場合、どうするか? ③給与計算にどれくらい時間が必要か? ④年末年始、夏季休暇、ゴールデンウイークなど稼働日数の少ない月の事も考慮して決めましょう。 |
賃金 | ①月給制?日給制?時給制? ②基本給の決め方は? ③手当は? ④残業の計算方法は? ⑤昇給は、原則何月に実施? |
賞与 | ①賞与の支給の有無? ②支給の場合、年に何回? |
退職金 | ①毎週何曜日休み? ②毎月何日休み? ③年間休日は何日? |
労働時間と休憩時間 | ①何時から何時まで働く? ②休憩? |
休日 | ①毎週何曜日休み? ②毎月何日休み? ③年間休日は何日? |
勤怠管理方法 | ①タイムカードを使うのか? ②クラウド勤怠管理システムを使うのか? ③有給休暇の管理はどのように行う?エクセル?システム? |
保険手続き | ①社会保険の手続き方法を確認し、決める。 ②労働保険の手続き方法を確認し、決める。 |
給与計算の方法 | ①給与計算は外注するのか?自分で行うのか? ②勤怠集計は外注するのか?、自分で行うのか? ③給与計算ソフトは使うのか? ④固定給の計算は、どのように行う? ⑤残業手当、休日手当などの変動給の計算は、どのように行う?特に月給者。 ⑥振込はどうする?ネットバンキングの契約は?振込先口座の指定はあるのか? |
所得税・住民税の 納付方法 | ①源泉所得税の納付はどうする? ②住民税の特別徴収の手続きはどうする? |
STEP3:求人広告の選定
求人広告の選定が重要です。
求人広告は無料のものと有料のものがありますので、予算に応じて最適な広告を選ぶことが大切です。
次に、媒体の種類を理解することが必要です。求人広告は、ネット求人と紙媒体求人の2軸で整理すると良いでしょう。ネット求人には、ハローワークインターネットサービス、自社のホームページ、インディード、FacebookやインスタグラムなどのSNSがあります。一方、紙媒体求人には新聞、雑誌、求人チラシなどがあります。
特に無料で利用できるネット求人は、広範囲に求人情報を発信できるため、初めての採用活動に適しています。
STEP4:求人広告の作成
求人広告の作成は、主に、以下のポイントを押さえましょう。
- 読みやすさと明確さ
– シンプルで明確なメッセージを心がける。
– キャッチコピーが奇抜すぎず、情報を詰め込みすぎない。 - 具体的な仕事内容の記載
– 基本的な業務内容と業務量。
– 1日のスケジュール。
– 取り扱う商品やサービスの特徴。
– 顧客の特徴。 - 教育制度やキャリアパスの説明
– 入社後の研修制度やサポート内容。
– 未経験者でも安心して応募できる情報を提供。 - 会社や仕事の魅力の強調
– 業界の将来性や安定性。
– 昇進のスピードや福利厚生の充実度。
– 社内の雰囲気や働きやすさを具体的に示す。
STEP5:採用プロセス
効果的な採用プロセスの設計が重要です。プロセスが複雑すぎると応募者に辞退され、簡単すぎるとミスマッチが発生する可能性があります。以下のポイントを参考にしてください。
- 書類選考の設定
– 応募の際に提出が必要な書類を明確にしましょう。履歴書や職務経歴書を求めることが一般的
です。
– 書類選考では、応募者の基本的なスキルや経験を確認し、次の選考ステップに進むか判断します。 - 面接の回数と内容
– 面接の回数を決定します。一般的には2〜3回の面接が適切です。
– 各面接で何を質問するのか、具体的な質問項目を準備しましょう。 - 診断ツールの活用
– 必要に応じて適性診断ツールを使用し、候補者の能力や性格を客観的に評価します。 - WEB面接の検討
– 地理的な制約を減らすために、WEB面接の導入を検討します。これにより、遠方の優秀な人
材にもアクセスできます。 - 会社説明資料の準備
– 応募者に対して会社の魅力を伝えるための資料を用意します。会社のビジョンや文化、具体的な業務内容を分かりやすく説明することが重要です。
STEP6:面接方法
以下のポイントを参考に、効果的な面接を行いましょう。
- 面接場所の選定
静かで気の散らない場所を選びましょう。電話が鳴ったり、来客があるなどの中断がない環境を整えることが大切です。 - 面接の流れの構築
面接の流れを事前に決めておき、スムーズな進行を心がけます。
応募者に安心感を与えるためにも、整然としたプロセスが必要です。 - 質問内容の準備
面接の目的に応じて、確認したい事項を事前に文章化しておきます。準備を怠らず、思い付きで意味のない質問をしないようにしましょう。
学歴や出身などの類似点で盛り上がりすぎず、応募者の本質を理解する質問を心がけます。
STEP7:入社準備
初日が肝心で、入社日に、しっかり準備を整えることが重要です。
- 採用案内・不採用案内の方法決定
採用・不採用の連絡方法を決めます。不採用の場合は特に丁寧に対応し、応募書類の返却方法(普通郵便か書留か)も事前に決めておきましょう。 - 入社時に提出してもらう書類の準備
入社前に必要な書類を案内し、初出社の日に提出してもらうようにします。主な書類には以下のものがあります。
– 労働条件通知
– 採用時誓約書
– 特定個人情報等の取扱に関する同意書
– 緊急連絡先
– 健康診断書
– 住民票記載事項の証明書
– 源泉徴収票
– 賃金の口座振替に関する同意書
– マイナンバーカード
– 給与所得者の扶養控除(異動)申告書
– 雇用保険被保険者証のコピー
– 給与・賞与明細等の電磁的交付による同意書
– 年金手帳または基礎年金番号通知書
– 健康保険・国民年金の扶養家族届出書及び添付書類
初めての採用で避けたい失敗例
求人や採用に関する法律や規制の無視
求人や採用に関する法律や規制を無視することは、重大なトラブルを招く原因となります。
法律・規制 | 内容 | NG具体例 |
雇用対策法 | 原則として従業員募集における年齢制限を禁止。ただし、高齢者の技術継承など特別な事情がある場合は例外。 | × 40歳未満 |
男女雇用機会均等法 | 性別による差別を禁止。男女平等な条件で募集を行う。 | × 男性のみ × 女子高のみ募集要項を配布 |
職業安定法 | 求職者に対して公正な情報提供を義務付け。 | × 試用期間中、賃金が異なるのに、求人票に記載していない。 |
外国人雇用 | 在留資格を確認し、働けるかの確認。 | × 在留資格を確認せず、雇用。 × 就労できない在留資格であるにもかかわらず雇用。 |
労働基準法 | 労働条件を労働者に明示。 | × 賃金など絶対的記載事項を採用時に伝えない。 × 労働条件通知書を渡さない。 |
経験の浅い人材の過大評価
以下のポイントに注意しましょう。
初めての採用する場合では、研修に十分な時間も人も割けないことが多く、即戦力を期待しがちです。
経験者を募集していても、採用人数が少ない場合など、十分な選考を行わずに、経験の浅い人材を採用してしまうことがあります。
しかし、これでは期待に応えられずミスマッチが発生するリスクが高まります。
それにより、せっかく採用した人材が早期に離職してしまうと、企業にとって大きな機会損失となります。採用活動にかけた時間やコストが無駄になるだけでなく、再び人材を探す手間も増えます。
選考プロセスの短縮による適性判断の不足
思ったような応募がない場合や、急いで人手が必要な状況で、選考プロセスを短縮や省略してしまい、適性判断が不足するケースがあります。
そして、下記のような選考プロセスの短縮や省略により、大きなミスマッチ発生の可能性があります。
- 十分な面接を行わない。
面接を通じて候補者のスキルや経験、性格などをじっくりと確認することが重要です。また、面接の際に質問を事前に準備せず、場当たり的に質問をしてしまうと、必要な情報を得ることができません。 - 感覚で採用を決定する。
具体的な評価基準や適性検査などを設けずに、直感だけで判断すると、ミスマッチが発生しやすくなります。
候補者の適性をしっかりと評価し、企業のニーズに合った人材を選ぶことが求められます。
慎重に選考プロセスを設計し、適切な人材を見極める努力を惜しまないことが成功の鍵です。
労働条件を決めていない。何となく決めている。
思いつきや、記憶で求人内容を決めてしまうことで、実際の雇用条件が求人内容と異なるトラブルが発生することが少なくありません。
求人内容と、実際の雇用契約が異なることで、従業員から訴えられ、会社が裁判で負けた事例もあります。
解雇したいが、できない。
面接を経て採用が決まったものの、実際に働き始めると無断欠勤が続くなど、勤務態度に問題がある場合があります。
しかし、解雇の基準が就業規則に明記されていないと、適切な手続きを踏んで解雇することが難しくなります。
また、服務規律で従業員がどのような行為を行った場合に処分されるかがしっかりと決まっていない場合も同様です。
さらに、始末書の書式や取り交わし方法が定められていないと、違反行為に対する適切な対応が取れなくなります。
助成金が受給できない。
助成金は返済不要の資金であり、適切に活用することで企業の経済的な負担を軽減できます。
特定の条件を満たす方を雇用することで受給可能な助成金がありますが、助成金を受給するためには、保険手続き、勤怠管理、給与計算、残業代の計算など、労務管理を適正に行うことが最低限必要です。
例えば、入社書類の不備や勤怠管理のミス、給与計算の誤りなどが原因で、ほかの条件を満たしているにもかかわらず助成金が受け取れないことがあります。
求職者からの質問に回答できない。
面接は、会社が求職者を面接する場であると同時に、求職者が会社を面接する場でもあります。
自分が一生働くにふさわしい環境かを決めるために、求職者が質問した事に対して十分な回答ができないとせっかく優秀な方が応募があっても、採用に繋がらなかったり、都度一貫性のない回答を繰り返していたことで、個人ごとに条件がバラバラになるなどトラブルに発展することがあります。
採用活動を始める前に、就業規則や会社の制度を明確にし、詳細な情報を整理しておくことが重要です。
具体的な制度を整備し、従業員からの質問に対して正確で一貫した回答ができるように準備を整えることで、信頼関係を築くことができます。
まとめ
事業が軌道にのり、初めての採用活動は重要であることはわかっていても、何から始めてよいかわからず、また、十分に事前準備に時間をかけたり、お金をかけたりすることが難しく、何となくやってしまったこともよく聞きます。
効率的かつ効果的な採用活動ができるよう、採用前の制度を準備したり、入社時の手続きなどは、コステム社会保険労務士事務所の無料相談を活用ください。